「公団 金町団地」 建替闘争の記録

1992年(平成4年)から始り、1999年(平成11年)に「協定書」により一応の決着をした「公団 金町団地」(現在:都市整備機構 金町第一団地)の建替闘争の一部を住民の立場からまとめたものです。


「建替と向かい合った日々」

小さな団地の大きな闘い

 金町団地 「建物明け渡し」裁判の記録

争点;公団による、「建て替え事業」が、借家法に定める「正当事由」を有しているか、否か

 *口頭弁論 第6回、第7回  
 *和解交渉 第1回〜第5回 

*第6回口頭弁論 1996年(平成8年) 6月7日(金) 15:00〜15:50

東京地方裁判所  506号法廷   裁判長;一宮なほみ(女性)


*公団側;なし。


*住民側;

  §1.準備書面(八)公団主張への総論的反論...坂本弁護士

     公団の正当事由を基礎づける各事実は、

     (A)建て替え事業である。

        (a)閣議決定の住宅政策の推進

        (b)居住水準の向上と適正利用の必要性

        (c)全国的規模で多数の団地で実施

        (d)話し合い期間の設置と代替給付

     (B)金町団地でも

        (a)団地の現状から必要性がある

        (b)代替給付と居住者に配慮した

        (c)居住者多数の同意を得た

    と主張するが、全て抽象・一般的事実のみ。具体的に建物明け渡し請求の根拠にな

    らない。話し合い期間も「協力義務」を前提にしたもの。「代替給付」は正当事由の

   補完事由でないと主張するが、これは、特異な見解である。

   ★金町団地での、具体的な建て替えの必要性がない。単に昭和30年代に建築された

    からと主張しているだけ。

   ★各事実を裏づける事実がない。高度利用も見直すべきもの。

   ★居住者も115名(除く15名の被告) 61.6%が不同意である。

    家賃増額請求訴訟では、公団と居住者の関係は、私法上の契約関係と主張している

    のが、この建物明け渡し請求では、国の施策とか、公団の公共性と主張していて矛

    盾している。公団が勝手に国策を解釈しただけ。

   ★バブル経済が終わった現在、「ゆとりとうるおい」から住生活も考えるべき。


§2.準備書面(九)公団主張への各論的反論...川上弁護士

   1. 家賃裁判では、私法上の賃貸借契約である、と主張した公団が、建て替え裁判では

   公共性を持ち出している。矛盾している。

   2. 公営住宅の建て替えとは、基本的に異なるのに、公営住宅に準じようとしている。

   3. 建て替えは、国民の住宅需要に応えていない。戻り入居できない現状。増大してい

     る空き家。原因は、高い傾斜家賃である。


提出証書;

   乙  40号...自治会アンケ−ト。平成8年3月実施

      41号...不同意署名第三次分

      42号...第7期5箇年計画。平成8年3月15日閣議決定。

      43号...「建て替え団地」関係資料。フレール西経堂とすまいる亀有の戻り

            入居数。(23区自治協作成)

      44号...23区公団アンケート。建て替えと家賃。

      45号...団地別改定後家賃一覧。東京支社作成。

     46号...亀有団地の建て替え後の家賃と平面図。平成3年9月作成。

     47号...西経堂団地の建て替え後の型式別家賃。


  *裁判長より、和解の勧告があり、受ける。


◎第1回和解交渉 1996年(平成8年) 10月28日(月)

住民は出席せず。弁護士に一任。 

    *公団の条件

      1. 家賃の値下げ。

      2. 平成6年9月30日までに、提供していた、代替給付の提供。

      3. それでも、戻れない、被告への対応(移転先の斡旋など)。

    *公団として、できないこと。

      1. 個人別の立ち退き料の支払。

      2. 建て替えの見直し。

       3. 一部建て替え。


    ★住民の主張。

      被告、14人だけの問題ではない。地域・社会の問題である。

      1. 居住者が住み続けられない「高い家賃]。

      2. 高層住宅の弊害。

      3. 話し合いをしない、公団の態度。


    ☆裁判官の公団に対する要請。次回(11月18日に)

       1. 金町団地の家賃額、

       2. それでも、戻り入居できない被告への対応策、

    の提示。


 ◎第2回和解交渉  1996年(平成8年) 11月18日(月)

住民は出席せず。弁護士に一任。


*前回の要請に対する公団の回答。

  1. 金町団地の家賃額の提示...“金町団地は入居の予定がないので、明示はできな

    い。見通しとしては、「西新井団地」と同じぐらいに、下げられる。”

  2. それでも、戻り入居できない被告への対応策...近隣(金町駅前団地、金町第2

    団地、竹の塚第3団地など、9団地13部屋)、都営住宅(上千葉第3アパート

    亀有一丁目アパートなど、5アパート8部屋)のリスト。


★住民側の反論。

  1.(イ)「西新井団地」並みに家賃を下げるのは、当然の流れで、和解の場で特に出

      てきた家賃ではない。和解と言うのであれば、それ以下の家賃でなければ、無意

      味である。

   (ロ)文書化できないと言いながら、公団は入居前の建て替え説明会で提示してい

       る。この関係をどうするのか。

  2. 住民は建て替えを希望していない。住民は現状のまま、金町団地に、住み続けたい

    だけである。


    ☆裁判長から、住民側に対する要請。次回(12月20日)に、

      金町団地では、具体的に“いくらの家賃なら応じられるのか”。


*第7回口頭弁論 1996年(平成8年)12月13日(金)13:30〜14:00

東京地方裁判所  506号法廷   裁判長;一宮なほみ(女性)


*公団側:なし。


*住民側:

   §1.準備書面(十)  住民の正当性の総論的主張...内藤弁護士

     ◎正当事由の歴史的背景...我妻栄を引用。

     ◎公団の本来の役割...所得上、公営住宅と公庫融資(持家)の中間層に健康で

      文化的な生活を保障するために住宅を供給しなければならない。

     ◎金町団地居住者の収入実態からみた「正当事由」の不存在...家賃¥13万で

      も年収¥780万が必要。これを満たす世帯は、15%しかない。

      また都営住宅にも、収入基準と応募倍率から入居できない。

     ◎一律建て替えでは、正当性を欠く。部分建て替えを検討すべき。


  提出証書;

   乙  48号の1...日本経済新聞。12月1日付。“2万戸の家賃下げ”。

          2...読売新聞。12月2日付。“公団家賃10%下げ”。

       49号....読売新聞。12月4日付。公団自治会協議会アンケ−ト。

             “世帯主の1/3、60歳超”。


◎第3回和解交渉  1996年(平成8年) 12月20日(金)

住民は出席せず。弁護士に一任。


    *公団: 1. 家賃額を明示できない。

          2. 設計上の変更をする。

          3. 戻り入居の保障。

    ★住民:基本の家賃が解決できなければ、受けられない。


 ◎第4回和解交渉  1997年(平成9年) 1月29日

住民は出席せず。弁護士に一任。


    *公団:新提案なし。(政府から、公団の廃止が言われ出す。公団の行方が

         不透明となる。)


 ◎第5回和解交渉  1997年(平成9年) 3月17日

住民は出席せず。弁護士に一任。


    進展なく、交渉打ち切りに。






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