「公団 金町団地」 建替闘争の記録
1992年(平成4年)から始り、1999年(平成11年)に「協定書」により一応の決着をした「公団 金町団地」(現在:都市整備機構 金町第一団地)の建替闘争の一部を住民の立場からまとめたものです。
「建替と向かい合った日々」
小さな団地の大きな闘い

金町団地 「建物明け渡し」裁判の記録
争点;公団による、「建て替え事業」が、借家法に定める「正当事由」を有しているか、否か
◎口頭弁論 第8回〜第11回
*第8回口頭弁論 1997年(平成9年)6月6日(金) 13:10〜13:50
東京地方裁判所 709号法廷(今回から変更)
一宮なほみ 裁判長、秋吉仁美 裁判官、安田大二郎 裁判官。 |
*公団側:
§.準備書面(5)
1. 建て替え事業は公共・公益的正確を持つ...第5期住宅建設五箇年
計画に基づく。
* 反論:これは、もう変更された。
2. 東京都と葛飾区という地域の行政レベルでも建て替えが求められている
東京都住宅マスタープラン、葛飾区住宅基本計画も策定されている
*反論:上記都のプランでも「高齢者世帯等の居住の安定に配慮しつ
つ建て替えを促進する」とある。公団のやり方には、この部分が欠ける。
3. 金町は利便性が高く、需要が極めて高い。
応募倍率約19倍。
* 反論:一体どこの計算か。6月8日、スマイル亀有にいったが、まだ
空き家が20戸ぐらいあった。当然無抽選である。また、新聞
の入居者募集の折り込みチラシもある。
4. 都市計画法でも、建べい率60%、容積率200%なのに、現行の容積率
は、53%でしかない。
* 反論:公共性をうたっていながら、日照の問題をもたらす、容積率を
いうとは、何たる自己矛盾。
甲 26号証...平成9年3月3日付 衆議院予算委員会第8分科会議録。
亀井建設大臣の建て替えについての、答弁。
27号 ...東京都住宅マスタープラン(平成3年7月)
28号 ...葛飾区住宅基本計画(平成4年6月)
29号 ...東京都住宅マスタープラン(平成9年4月)
30号の1..葛飾区都市計画図(用途地域等指定図)
30号の2..葛飾区地域地区図(平成4年7月)
*住民側:
§.準備書面(11)...田中弁護士
1. 公団が主張する「正当事由」は「国策による公団住宅の建て替え事業」である。
しかし、その国策は、1997年1月22日、亀井建設大臣の答弁でも明らか
になったように、公団の廃止となり、存在しない。
「公団住宅大量供給」と「設立の目的」がなくなった。
2. 閣議決定で、
(1)平成11年に、住宅・都市整備公団は廃止する。
(2)都市開発・再開発業務と現在の賃貸住宅の管理業務は新法人に引き継ぐ
(3)分譲住宅業務からは撤退する。
となった今、公団は「正当事由」をどう構成するのか。
3. 当訴訟は進行不能であるから、取り下げるべきである。
*第9回口頭弁論 1997年(平成9年)9月5日(金) 13:10〜13:45
東京地方裁判所 709号法廷
一宮なほみ 裁判長、秋吉仁美、安田大二郎 裁判官 |
*公団側:
§.準備書面(6)
訴訟と平成9年6月6日付の「特殊法人等の整理合理化について」の閣議決定の
関連について
1.最高裁の判例(昭和28年4月9日)「正当事由による解約が一旦有効になされ
た以上、たとえ解約の効果発生後に事情が変動しても、すでになされた解約が
正当性を喪失して無効に帰すべきいわれはない。」
とあるように、「爾後の事情」の「住宅公団の廃止」は当訴訟を左右しない。
2.当訴訟は、昭和56年法律48号の「住宅・都市整備公団法」に基づくもので
平成9年6月6日の閣議決定は建替事業を具体的政策判断したものではないので
本訴訟に影響しない。
3.建替事業は継続して行っている。
全国で11団地、5226戸を新たに着手。用途廃止も16団地の内2団地手続
きした。
建設大臣も平成9年3月3日の衆議院予算委員会第8分科会で「居住条件が悪化
していくままに放置できない。30年代のものは建て替えをしている。今後も推
進したい。」と述べている。
*住民側:
§.準備書面(12)...金弁護士
公団が主張する正当事由「国の施策」について
1.建て替え事業による「集団住宅及び宅地の大規模な供給」の必要性を本件
賃貸借契約更新拒絶の「正当事由」とし、昭和61年の閣議決定と平成3年の
閣議決定により「国の施策」とされたから、これを実現するために「建て替え
事業」を行うと、公団は主張する。
しかし、「国の施策」は、
●住宅・都市整備公団の廃止
●賃貸事業の縮小
に向かっている。公団が依然として正当事由に「国の施策」を根拠にするなら
「大規模な供給」という方針が「国の施策」として現在も存在することを証する
ことが必要である。
2.亀井建設大臣の発言は、既存住民のためのメンテナンスや建て替えについて述べ
たもので、公団が行っている既存住民を立ち退かせた上での国民全般に対する
大規模な供給を目的とした「建て替え」とはまったく正反対である。
公団が従前の主張を維持するかどうか、釈明を求める。
*第10回口頭弁論 1997年(平成9年)11月21日(金)13:30〜14:00
東京地方裁判所 709号法廷
一宮なほみ 裁判長、秋吉仁美、安田大二郎裁判官 |
*公団側:
§.準備書面(7)
1.審理の対象である「建物明け渡しの正当事由」の存在時期は、昭和28年4月9日
判決であるように、正当事由に基づく契約終了時までの事実があればよい。
2.平成9年6月6日付の「公団の廃止」は契約終了後の事情である。また、公団は
建て替え事業を、その後も進めている。
3.原告の準備書面(5)は、被告が地元公共団体の整備計画に適合していないとの主
張に対し「東京都住宅マスタープラン」でも「重点供給地域」として位置付けられ
ていると付言したもの。正当事由の存在時期に関しては、一致している。
*住民側:
準備書面 なし。

*第11回口頭弁論 1998年(平成10年)3月13日(金)13:30〜14:00
東京地方裁判所 709号法廷
一宮なほみ 裁判長、秋吉仁美、安田大二郎裁判官 |
*公団側:
準備書面 なし。
・証人申請 三枝(さえぐさ)元金町団地建替事務所所長
*住民側:
§.準備書面(13)...坂本弁護士
−公団の準備書面(5)「建替事業の公共・公益的性格について」の反論。
1.「東京都住宅マスタープラン」との整合性
◎「重点供給地域」と公団は主張するが、単に都のプランとして載っているだけで
事業の実現の義務も制裁も課するものではない。
◎計画は「都民の参加と協力で実現させる」となっている。公団の「建て替え」は
一方的である。
2.「葛飾区住宅基本計画」との整合性
◎求められているのは、「安定して住み続けられる状況」である。公団はこれに
対応していない。
東京都も葛飾区も公団の「建て替え」事業推進の根拠とならない。
公団廃止で国から見放されたので、地方自治体を強引に出して、「建て替え」の
よりどころ求めたらしいが、根拠がない。
3.「応募倍率の虚構」
空家の応募倍率が19倍と高い、と主張するが、金町団地の近くの「すまいる
亀有」の広告では「すぐ住める」と無抽選での入居が可能になっている。
公団の数字は無意味。
乙 第51号...98年1月23日 東京新聞の公団折り込み広告
「すまいる亀有」、すぐ住める!!